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VSTi u-he Zebralette Legacy

u-he純正無料シンセは以下の3種があるが、どれも有料版から切り出されたような単機能なものになっている。

Zebraletteというスペクトルシンセを試してみる。やや特殊な構造のシンセだが、出音が素晴らしかった。 シンセは守備範囲の広いSurgeをメインで使っていこうと思っていた矢先、音の良さでZebraletteをメインにしようと思い始めている。 そんなZebraletteを数回に分けて紹介してみようと思う。

https://u-he.com/products/zebralette/
Zebralette 2.9.3 (revision 12092) 2021年08月10日リリース

zebralette

Zebraletteは有料ZEBRA2の一部切取り版

ZEBRA2はu-heのフラッグシップモデルだが、これのオシレータを1個と、最低限必要なコントローラをコンパクトにまとめたのがZebralette。ZEBRA2のオシレータ学習用という位置付けでもある。u-heはmini ZEBRAと呼んでいる。2005年12月に初リリースされ、現在まで継続されている。2024年にはzebralette3として別モノとして生まれ変わる予定。

ブロックの内容は、OSILLATORx1、LFOx2、ENVx1、MSEG(multi stage envelope generator)x1、GLOBAL(設定)、Effect(Delay、Chorus or Phaser)という具合。

普通のシンセではオシレータが2~3個+ノイズジェネレータなどが使えるので、 Zebraletteのオシレータ1個は見劣りする。 しかし発音構造が普通のシンセとは違うことと、ユニゾンはできるので1個でも結構何とかなる。 また一見フィルターがないように見えるが、オシレータに26種ものスペクトル・エフェクトが内蔵されている。 発音も基本的にはステレオで行うことが出来るので、かなり複雑な音をオシレータだけで作り出すことが出来る。

GUIについて

以前は下絵のようにエキゾチックなスキンで、取っ付きにくい印象だったけど、2020年10月にバージョンアップされて、上記のようにZEBRA2準拠の普通っぽいスキンとなった。ブロックも明確になり操作性も向上。 基本的なレイアウトに不満はなく、よくまとまっていると思う。混沌としているGUIが多いシンセの中で、優秀な部類だと思う。 正直GUIが一新されて、はじめて使ってみようと思えたのだ。機能的なGUIは重要な要素。

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音がよい

同じくu-he社のTYRELLを触ったときに思ったのだけど、u-heのシンセはどれもu-heの音がする。タイプが違うシンセでもu-heの一貫した音を持っている。 このZebraletteは有料のZEBRA2のオシレータ1個分でしかないが、それでも音の良さは充分伝わってくる。中音域の存在感が他と違って妙な生々しさとなめらかさがある。ただZEBRA2と比較してしまうと重厚な音作りには向いていないようだ。 物足りなくなったらZEBRA2を買ってね。ということなのだろう。 Zebraletteで作った音は、そのままZEBRA2でも完全再現できることからも、ZEBRA2への移行を考慮している。 確かにZEBRA2は説得力がある音で魅力的だ。 作曲家のHans Zimmerもソフト音源はZEBRA2だけのようで、そのポテンシャルの高さが窺える。

C.グノー/J.S.バッハのアヴェ・マリアを東海林修風アレンジで打ち込んでみた。他のシンセも使っているけどメインはZebralette。

シンセ初心者にはお勧めできない

ベーシックなアナログ系シンセとは思想が違うので、シンセの学習には向いていない。 Zebraletteで学習したことは他のシンセではあまり役に立たないので、無駄になりやすい。 逆に他のシンセをいろいろ知っていて、その上でZebraletteの価値を見い出せれば、うまく付き合えると思う。

CPU負荷は意外と低め

同じu-heのTYRELLと比較しても軽い軽い。やはりアナログサウンドを追及すると重くなるようだ。 Surgeと比較すると同等か、やや重いが許容範囲。改めてSurgeの軽さには脱帽です。 とりあえず10年越しの非力なマシンでも大きな問題はなさそう。

大まかな信号の流れ

GUIをブロックごとに分けて、信号の流れを書いてみた。青い線がオーディオ信号で、緑とピンクがコントロール信号。

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これを見ると意外とシンプルなことが分かる。 基本的にはコントロール信号を受けるのはオシレータだけと考えていい。 LFO1のDEPTHだけは、コントロール信号を受けられるけど、やや例外的。 エフェクトは独立しているものと考えられるので、個別に扱えばいい。 各パラメータはエフェクト以外は表に出ていて設定の確認はしやすい。

それぞれのブロックで何をしているのかさえ理解してしまえば攻略も容易に思える。 一番厄介なブロックはオシレータに属するスペクトル・エフェクトだろう。それ以外は通常のシンセとそれほど大きな違いはないと思う。厄介なブロックを簡単に紹介してみる。

OSC FX スペクトル・エフェクト

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通常シンセと大きく違うのはOSC FXというオシレータに入っているスペクトル・エフェクトの部分で、音が良く感じる秘密のひとつ。 通常シンセのフィルタは減算式のHPFやLPFなどで、入力された信号を削るイメージでOSCとは独立しているのだが、Zebraletteの場合は、減算、加算、乗算等々、26種のスペクトル・エフェクトが用意されていて、そのうち2個のエフェクトを直列につないで音作りをする。さらにこれらがOSCに内蔵されているという、あまり見ない構成。

つまり、各種エフェクトの振る舞いを理解しないことには、音がどうなるのかイメージすることは不可能。 ひとつひとつ動作を確認する必要があり、それなりに工学的な知識も必要になってくるので敷居は高い。さらに残念なことに、ここで得た知識は他のシンセではほとんど役に立たないだろう。 各エフェクトの振る舞いは結構な量なので別ページに書こうと思う。

では、なぜ音が良いと思うのか? 減算、加算、乗算の組み合わせが一つのポイントだと思う。うまく使うと、こもったような音ですら10kHz以上の高音域がしっかり出ていて空気感や、肌触り感が消えないという点。減算式だとフィルタをかけすぎて本当にこもってしまうこともしばしば。そして有機的な揺らぎが常にあって、とても音楽的な音だということ。あまり細かいことをしなくても、大まかな設定で、そういう音が出るように作られている。これはu-heのセンスだと思う。

Waveform

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エフェクトの次に面倒なのはここかもしれない。 オシレータの波形なので、ちゃんと理解する必要がある。 編集モードは4タイプあるが、大きく分けると波形編集と周波数スペクトル編集の2種類となり、編集方法として曲線か垂直バーを選択できる。

厄介なのは、それぞれが独立しているため、表示だけが切り替わっているわけではないということ。 しかし、ふたつのMorphモードのデータは共通しているので、一方を動かすと、もう一方も変化してしまう。Blendでも同じことがいえる。つまりモードを切り替えると音が変わってしまう。 いろいろ混乱を招く仕様だ・・・ そのため途中でモード切り替えはお勧めできない。

GeoMorph

1周期分の波形を曲線で編集

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波形もそれっぽくなっているが、サインやコサインをここで書くのは諦めた方がいい。そういうのはSpectroBlendを使った方が確実。

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GeoBlend

1周期分の波形を128本の垂直バーで編集。マウスでちまちまと描けるのだけど、キーを兼用するときれいに早く描ける。
ctrl+ドラッグ:複数線のレベルを直線で揃えて一度に描ける
alt+ドラッグ:複数線を一度に消せる

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ちゃんとノコギリ波が再現されている。

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SpectroMorph

10オクターブ分の倍音を曲線で編集。一番左が基音で、右に行くほど高次倍音となる。 レベル0は中心ではなく底辺のようだ。つまり位相の操作はできない。インターフェイスがGeoMorphと共通のためか中心が0ぽいのはよろしくない。混乱を招くと思われる。

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10オクターブ分の整数倍音をレベル一定で重ねたもの。この波形を見る限り実際の各倍音の出力レベルは違うようだ。

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周波数スペクトルを見てもナイキスト周波数の20kHzまで出ている。

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SpectroBlend

6オクターブ分の倍音を128本の垂直バーで編集。1本1本は倍音となっていて一番左が基音となる。つまり128倍音まで扱える。0レベルは中心で位相の操作もできる。

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128倍音までレベルを変えずに加算したもの。これも実際の各倍音の出力レベルは違うようだ。きれいなノコギリ波が出来るところをみると、倍音の最大レベルは、基音レベル/倍音ということになりそうだ。

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周波数スペクトルを見ると16kHzぐらいまでで、SpectroMorphみたいに高域が出ていないことがわかる。

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ちなみにサイン波を書きたい場合は、左端に1本だけ描く。

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きれなサイン波が出ているのがわかる。

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フーリエ変換を知っている人ならば分かると思うが、整数倍音をひとつひとつ描画出来るということなので、描く根気さえあれば、変化のない持続音であればどんな音でも再現できるということ。手動加算式シンセとも言える。

ウェーブテーブル

ウェーブテーブル方式なので、上記の方法で描画した波形を16個持つことができ、それらを行き来して音の変化を作ることも可能。Morphを選択している場合は、波形と波形の間も補間しながら変化し、Blendの場合はクロスフェードする。

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MSEG

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multi-segment envelope generatorの略ということを知ってしまえば、肩の荷が下りるブロック。自由度の高いENVということで、すぐ使いこなせる部分。特徴としては自由に描画できるところと、ループがあることだろう。基本ENVなので、どこにでも適用できるのだが、やはりウェーブテーブルの操作に使うのが一番効果的だと思う。特にループ部分が重要。

やや特殊なところ1 ノイズジェネレータがない

Zebraletteにはノイズジェネレータがないので、ホワイトノイズを作ることが出来ず、打楽器のスネア、金物系、効果音などは最も苦手とするところ。 mini ZEBRAなので、多くを望んではいけない。できないことは素直に他のシンセを使うべきだろう。 それでも無理やりハイハットぽいことはできないことはない。 サンプルはノコギリ波を使って、FXでScramblerとFilterを通したもの。

やや特殊なところ2 ほぼ相対値

気を付けたい点としては、多くの場合絶対値ではなく、弾いたノートに対する相対値だということだろう。 またパラメータは0~100であることが多く、数値は物理的な何かを指していることは少ない。 これは結構注意が必要で、他のシンセと同様に音作りしようとすると戸惑います。

減衰する音

PPG Waveが脚光を浴びた理由はシンセでアコースティックなリアルな音が出せるという側面が大きかったと思う。例えばピアノの音を作りたい場合、丸々サンプリングするほどのメモリはないため、工夫が必要になる。 ピアノの音はアタックに多くの複雑な倍音が含まれていて、その後、倍音の少ないおとなしい音となり減衰していくという特徴がある。 これをウェーブテーブルで実現する場合は、出だしだけサンプリングしたまんまの音を使って、大人しい音になったら同じ音をループしながら減衰させていけばいい。こうすれば少ないメモリでもそれっぽい雰囲気は出せる。 アニメは最後の白点で止まっているけど、実はここでループしている。

音サンプルはピアノぽくしてみた。

アタックの特徴がある持続音

例えば管楽器や弦楽器などをイメージ。これもピアノに近い方法だが、違いは持続音にすることができるという点。ループのときに、減衰ではなく音量を維持し続ければいい。そして音を止めたときに、やんわり響きが残るようにリリースするとそれっぽくなる。 音色制御はMSEGを使ってループを使用。白いハンドル間をループして、鍵盤を離すと、リリースに応じてその後へ移動。上が倍音が多く、下はサイン波に近い。

音サンプルはチェロぽくしてみた

変化する持続音

制御をLFOのサイン波で行えば波形の行き来がスムーズにできる。 下サンプルのような音はフィルターで作った方がよいとは思うけど。

独創的な使い方

今の時代リアルな音を求めるなら丸々サンプリングされた音源を使えばいい。ただ、そのような方向にしていくと、究極は本物を使えばよいという結論になってしまう。 ウェーブテーブルを使うなら、むしろ生楽器では出来ないような独自のものを作った方が価値があると思う。 以下は妙な使い方をした例。

Zebra Legacy