音叉でチューニング
ギターのチューニングは音叉で行っているのだが、チューニング手順はいろいろあるようだ。一般的な方法としては、ギターの5弦開放を音叉で合わせた後、5弦と6弦、5弦と4弦、4弦と3弦を5フレットと開放やハーモニックスを使って合わせていく。1、2弦はいろいろな方法があるようだが、ひとつは6弦と1弦を合わせて、最後に1弦と2弦を合わせて完了。これは5弦を中心としたチューニングとも言える。
使用している音叉 Wittner 921 ウイットナー(ドイツ)
ギターを始めたときは、上記のようなやり方で合わせていたが、5弦のみを基準にするので、どこかで調整が甘いと、その先ズレまくるという欠点がある。またハーモニックスもオクターブの関係にある2倍音(12フレットナチュラルハーモニックス)、4倍音(5フレットナチュラルハーモニックス)なら問題ないが、3倍音(7フレットナチュラルハーモニックス)では平均律ではなく、純正律で2セント高くなってしまう。またハーモニックスはオクターブチューニングや弦の太さにも影響を受けるため、あまり信用できない。
下はAと5度上のEのハーモニー。上段が平均律で緩やかなうなりがある。下段が純正律でうなりがない。
ギターで3倍音のハーモニーを使ってチューニングすると僅かながらズレてしまうことが分かる。
上段平均律 A220Hz E329.6275569128699Hz
下段純正律 A220Hz E330Hz
そこでなるべく音叉で各弦をチューニングする方法に変更した。具体的なやり方はこんな感じ。
独自の音叉によるチューニング方法
- 5弦 5フレット上のナチュラルハーモニックスと 音叉 440Hz
- 3弦 2フレット(14フレットナチュラルハーモニックス) と音叉 440Hz
- 1弦 5フレット と 音叉 440Hz
- 4弦 開放 と 5弦5フレット
- 2弦 開放 と 3弦4フレット
- 6弦 5フレット上のナチュラルハーモニックス と 1弦開放
こんな感じで5、3、1弦は音叉とあわせている。残りの弦は隣の音叉で合わせた弦や、オクターブ関係にある弦に合わせるので、ズレは生じにくくなっている。しかし、オクターブチューニングなどがしっかり出来ていないと、かえってまずい結果になるとも言える。音が合っているかどうかは音のうなりで判断しているが、うなりも考慮すべき点はある。
オクターブチューニングの重要性
開放弦の音と12フレットを押さえた時、開放の音と12フレットの音は1オクターブの関係になる。このとき、きっちりとオクターブの差があれば調整できていることになる。たとえば5弦であれば、開放が110Hzだから、12フレットの実音は220Hzとなる。しかし実際には様々な理由で完全なオクターブにならず、ズレが生じてしまう。これを最小限にするためにサドルを前後させたり、サドルの高さを調整するのだが、現在のアコースティックギターは調整が面倒である。サドルを削るしか方法がないからだ。とても頻繁に調整できるような構造ではない。これはギターのブリッジ&サドル構造の改善を望みたい。
当然ながら、オクターブの関係だけでなく、1~11フレットまでの各音も平均律で合っていることが重要。これがある程度正確に出ていないと、まともなチューニングは不可能。ネックが反っていたり、いい加減なギターだったりするとフレット音痴になったりする。 またフレットの減りでも当然変わってくるので完璧なギターなほぼないと思った方がいい。
音のうなりについて
チューニングではうなりを利用する。これによって微妙な調整ができるようになる。2つの音が近くなると音がうなり始め、音が近くなるほど、そのうなりの間隔は長くなる。音程の差がほとんどなくなると、うなりは聞き取れないぐらい長くなるというもの。この関係はオクターブ違いでも同じように起きる。
しかし5弦開放と音叉で音を合わせる場合、110Hzと440Hzで2オクターブの差がある。実際にはオクターブ以上離れると、うなりが聞き取りにくくなる。波形にしてみると下図の通り明らか。これを改善するには5弦5フレットのナチュラルハーモニックス440Hzを使う。同じ周波数になるので、うなりがはっきりと聞き取れるようになる。
440Hzに対して1セントずれた音を合成した波形(人工)
上段 110.0635568Hz ギター5弦開放
下段 440.2542274Hz ギター5弦5フレットナチュラルハーモニックス
上記は人工的な倍音を含まないサイン波の合成なので違いが明らかだが、実際のギターだと、1、2オクターブ上の倍音もよく出ているので、それなりのうなりは出る。
とりあえず音叉は耳に当てて使っている
ギターのブリッジに置く方法や歯で噛んでくわえるという方法もあるが、耳に当てた方が合わせやすい気がする。Wittnerの音叉は音が小さく、大きな音の持続音もあまりないことからそうしているのだが、持続音に関してはひじょうに小さい音なら結構長く聞こえる。耳につければその音もチューニングに利用できるが、問題は音叉を耳に当てている間片手しか使えないこと。ブリッジに押し当てる方法では、ある程度音叉にパワーが必要になってしまう。音叉をくわえる方法は衛生上よろしくはないが両手が自由になるので何かと便利かも。
平均律 各音の周波数の求め方
音叉の440Hz A(ラ)を基準音とし、これを元に各音の周波数を求める。下の計算式で求めた値は、基準音に対しての比率となる。440Hzにその値を掛ければ各音の周波数が求められる。
同音 20/12 = 1.00000
半音 21/12 = 1.05946
全音 22/12 = 1.12246
短3度 23/12 = 1.18921
長3度 24/12 = 1.25992
4度 25/12 = 1.33484
増4度 26/12 = 1.41421
5度 27/12 = 1.49831
増5度 28/12 = 1.58740
6度 29/12 = 1.68179
短7度 210/12 = 1.78180
長7度 211/12 = 1.88775
8度 212/12 = 2.00000
ギターの開放弦に当てはめた場合
1弦開放 E 329.62756Hz ( 440 * 2-5/12 )
2弦開放 B 246.94165Hz ( 440 * 2-10/12 )
3弦開放 G 195.99772Hz ( 440 * 2-14/12 )
4弦開放 D 146.83238Hz ( 440 * 2-19/12 )
5弦開放 A 110.00000Hz ( 440 * 2-24/12 )
6弦開放 E 82.40689Hz ( 440 * 2-29/12 )
セント
市販のチューナーをみるとセントという単位を使って音のズレ具合を表示している。セントは上記の平均律と似たような計算で導き出せる。上記は12で割っているが、セントでは1200で割ればいい。つまり1オクターブを1200等分している。半音を100等分しているとも言える。100セントずれれば、ちょうど半音ずれたことになる。
同音 20/1200 = 1.00000
半音 2100/1200 = 1.05946