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あちゃぴーの自転車通勤
u-he Zebra3 Public beta リリース

概要

u-heのフラッグシップシンセとして初代Zebraが2003年に登場し、2006年にメジャーアップデートされZebra2となる。 そして現在までマイナーアップデートを繰り返し約20年間Zebra2として存続。 そして、ようやくメジャーアップデートされZebra3となった。 Zebra3の開発には11年以上かかっているという。 今回のアップデートは互換性を持たない全く新しいシンセということで、いつもの無償バージョンアップではなく、有料となっている。 多分u-heの有償バージョンアップは、今回が初めてではなかろうか?

現在ベータ版なので、製品リリースは数か月後、もしくはもっと先になると思われる。 シーケンサーなどの一部機能は組み込まれていない。UIも今後変更されることがアナウンスされている。

zebra3 beta1

Zebra2では、サンプル、ウェーブテーブルは、簡易的に扱っていたが、 Zebra3では革新的なベクターシンセサイズに置き換わり、次世代シンセとなっている。 Zebra3ではサンプルの読込は可能だが、ベクターに変換され扱われる。 サンプルを直接的に扱うシンセはHiveが担当するということだろう。

個人的にソフトシンセは最新Zebraだけあればよいと思っている。 なぜならサウンドの守備範囲が広く、Zebra以外のシンセを必要としないから。 今回Zebra3になることで、未知のプラス面が注目される。 基本構成というかコンセプトはZebra2と同じだが、各モジュールを新規に作り直したということで、全く違ったシンセとして生まれ変わった。 また近年のu-heが得意とするアナログエミュレートをはじめ、u-he技術の全てが注がれている。 このページでは、ざっくり全体のファーストインプレッションを残しておく。 年末から来年にかけて、モジュール単位で試して、別ページでまとめていこうと思う。

ベータ版のダウンロードはKVR掲示板から
https://www.kvraudio.com/forum/viewtopic.php?t=625544

ライセンス

現在ベータ版だが、すでに購入可能となっていたので購入してみる。 Zebra2からのアップグレード価格は30ユーロ。 ただし日本からは別途悪の消費税がかかる。 また円安の影響もあり、現在トータルで6288円となった。

正式に発売されると価格は249ユーロとなるようだ。 現在のレートで消費税も含めると約5万円ということになり、u-he製品で一番高価になるようだ。 u-he製品はブラックフライデー以降値上がりしてしまった。 円高になれば多少下がると思うが、しばらく円安は続きそうだ。

u-he製品は今までシリアルナンバー管理だったが、Zebra3以降はライセンスカード方式(pngファイル)に切り替えるようだ。 u-he製品すべてを一括管理するので、個別にライセンス管理する必要がなくなる。 これからは下のようなカード画像が送られてくるので、それをインポートして使用する。

zebra3 beta1

他社がこぞって巨大な管理ソフトを導入する中、u-heはシンプルでスマートな方向に進む。 素晴らしい。

INITでトランスポーズが0になった

u-heはかたくなに-12をデフォルトとしていたが、ついに0をデフォルトとした。 なんてことはないのだが、u-heシンセに慣れていると、逆に違和感を感じるという逆転現象。

UIのカラー

Zebralette3のDark Modeの色調を採用している。スキンはひとつだけとなっている。 UIは最終的にはいろいろテコ入れされるようだ。

SCOPE

zebra3 beta1

Zebra3を触ってみて、まず地味に嬉しかったのが、接続の自由度が高いオシロスコープが搭載されたこと。 SCOPEアイコンをクリックするとMAIN GRID位置に表示される。(フロートなのでZebra内であれば位置は動かさせる) 同時に4chまで信号を扱える。 Bazilleでやってほしかったことが、意外にもZebra3でやってくれた。 Ubik2.0の資産がZebra3に投入されたのだろう。 実験等では必須ツールとなる。 ただしAudio信号を表示させるには表示チャンネル数を減らさないとダメみたい。 これは改善してもらいたい。

Module Performance Meter

zebra3 beta1

Zebra3内の細かな負荷を表示できるようになった。 高負荷なZebra3において、この手の監視ツールは重要。

GENERATORS RACK

この位置に入るモジュール一覧。

zebra3 beta1

モジュールのグループ化

今まではアクティブなモジュールが全てRackに表示されてしまい、数が多くなると見にくくなっていたが、 Zebra3からは、グループ化することで、これを解決した。 MODULATORS RACKも連動する。

zebra3 beta1

OSCILLATORS

Osc 1~4

zebra3 beta1

メインのベクターオシレータで、Zebralette3に相当する部分。 Zebra3ではZebralette3が4個入っていると考えてよい。

zebra3 beta1

パラメータを見るとZebralette3と大きくは変わらないようだ。 このオシレータだけでもすごいことになっていて、学習コストは半端ないね。 幸いこの部分だけで2年近く遊んでいるので、すぐに他を見に行ける余裕はある。

FMO 1~4

zebra3 beta1

モジュールひとつでかなり凝ったFMを実現できるようになった。 使い勝手もよく、FM好きにはたまらんモジュール。 DXをリスペクトしつつ、ユーロラック的な現代的FMも意識している。 ただKeyFollow関係は視覚的ではないので、調整が簡単ではないね。 今後じっくり見て行こうと思う。

Noise 1~2

zebra3 beta1

パラメータはシンプルだが、ノイズの種類は豊富。

zebra3 beta1

FILTERS

Filter 1~4

zebra3 beta1

WIPをクリックするとMAIN GRIDに以下の一覧が表示される。 表になってしまうと味気ない気もするが、Divaで採用されている名機のエミュレートが並んでいる。 また新しいフィルタもある。 調整パラメータが共通なので比較が容易で、フィルターの違いを試しやすくなっている。

zebra3 beta1

EQ / Resonator 1~2

zebra3 beta1

強力なEQ / Resonatorが搭載された。 全体的にFilterscapeを彷彿とさせる。 ZebraHZのResonatorが気に入っていたので、うれしい部分。

PHYSCAL MODELLING

Zebraにとって重要な物理音源。 この手のモジュールになると、物理音源とは何かということを知っていないと、全く手に負えないと思う。 Zebra2から大きく変わったので、どのようなことが可能になったのか今後試していこうと思う。

Exciter 1~2

zebra3 beta1

Zebra3で新たに加わったパルス専用発振器。 Zebra2のCombから発振器部分だけ独立し、強力になった感じ。 アルファ版ではMalletと呼ばれていたと思うけど、Exciterという名前に落ち着いたようだ。 Malletは具体的な打楽器をイメージしてしまうし、Exciterは倍音付加エフェクターの名称として広く使われているので、どちらも適切な名称には思えない。普通にpulseでよくないか?

Modal Resonator 1~2

zebra3 beta1

これもZebra3で新たに加わった共鳴器で、一番攻略が大変そうなモジュール。 倍音をコントロールするcsvファイルが読み込めるので、マニアが楽しめるゾーンになっている。

Comb 1~4

zebra3 beta1

発振器が切り離され、扱いやすくシンプルになったコムフィルタ。

MIXERS

柔軟性のある接続が可能になっている。

Mix 1~4

zebra3 beta1

4in1 1~2

これは・・・かなり変態的なMIXが可能になっている。

zebra3 beta1

4in4 1~2

zebra3 beta1

OTHER

Distortion 1~2

zebra3 beta1

強化しているモジュールが多い中、逆にシンプルになったように見えるディストーション。 これはRepro-5のDistortionと同等のようだ。 ボイスごとに歪ませることができるポリフォニックディストーションため、和音を歪ませたときノート間に相互作用がない。 Corrodeというビットクラッシャー的なモードもある。 FXにあるDistortion 3~4は、通常のボイス全体にかけるタイプのようだ。

Folder 1~2

zebra3 beta1

シンプルな見た目となった。 Zebra3では、内部動作を理解していないと扱え切れないようなUIが多い。

Ring 1~2

zebra3 beta1

FMもできるRingで、いろいろ出来そうな雰囲気。

Util 1~4

zebra3 beta1

ミニ機能を切り替えられるモジュール。

zebra3 beta1

MODULATORS RACK

この位置に入るモジュール一覧。

zebra3 beta1

LFO 1~4

zebra3 beta1

分かりやすいLFO。

MSEG 1~4

zebra3 beta1

Zebra3の売りのひとつベクターで生まれ変わった柔軟性抜群のMSEG。

zebra3 beta1

Envelope 1~4

zebra3 beta1

高機能なMSEGがあるため、シンプルで分かりやすくいエンベロープとなった。 それでもアルファ版デモでも取り上げていたリリース反応するなど、面白い機能が追加されている。

Mod Math 1~4

zebra3 beta1

Zebra2のMMIXの延長線上のようなモジュールだが、いろいろな用途で使えそう。

zebra3 beta1

Mapper 1~4

zebra3 beta1

u-he伝統のマッパー。機能的にはシンプルに見えるが、おそらくそんなことはないのだろう。 現状パッチにもあるが、LFOと兼用してシーケンサーやアルペジエータのような使い方も出来、以前よりも柔軟性は増しているようだ。

zebra3 beta1

Pitch 1~4

zebra3 beta1

タブも用意されているPitch。かなり力が入っている重要なモジュール。 TuningはBazille譲りの調整が可能で、±倍音や固定周波数などの設定ができる。 Glide、Vibratoなどの調整もここで行う。 4個設定できるので、使い方によってはかなり面白くなると思う。 Zebra3からVibratoはLFO1とは結びつかなくなったようだ。 Vibrato用Delayがないのが気になるなぁ。入れてくれないかなぁ。 またZebralette3にもあるDriftが無くなって、Calibrationの中に入った。

FX(LOWER PANEL)

この位置に入るモジュール一覧。 主にエフェクトだが、MODULATORS RACKに入っているモジュールもある。

zebra3 beta1

Delay 1~2

zebra3 beta1

シンプルながらこだわりを感じるDelay。PANICボタンがあるところが単体Delayを彷彿させる。 個人的にZL3のディレイタイムのズレが気になるのだが、Z3は普通のぴったりタイプ。

8-TAP Delay

zebra3 beta1

8個のディレイラインで構成されている。 リズム的に扱うために設計されているようだ。 お手本プリセットがあると思うので、そこから学習してみるかな。

Distortion 3~4

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるDistortionとの違いは、全ボイスにかけるタイプであること。

Ring 3~4

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

Folder 3~4

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

Compressor/Limiter 1~2

zebra3 beta1

意外と細かく調整可能なコンプ/リミッター。

Texture

zebra3 beta1

Mutable Instruments Cloudsにインスパイアされたエフェクト。 リアルタイム演奏に適しているように思うが、実際どう使うか迷うところ。

ModFX(Chorus, Flanger, Phaser) 1~2

zebra3 beta1

分かりやすい3モード切替式になった。

Filter 5~6

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

EQ 3~4

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

Burn

zebra3 beta1

内蔵モジュール性能メーターから正確な測定値を得るために使うもの。 音の加工用ではない。 Zebra3では、この手のサウンドデザイナー寄りの配慮が目立つようになった。

Reverb 1~2

zebra3 beta1

ClassicとLushの2タイプを切り替えられるようになった。 Classicは、Zebra2 Nu Rev(Hive Reverb, Repro Drench, Zebralette3 Reverb)に近いリバーブのようだが、パラメータが増えたとのこと。 確かにWidthがDiffusionとModに置き換わっている。

Util 5~8

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

Mix 5~6

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

4in1 3

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

4in4 3

zebra3 beta1

GENERATORS RACKにあるものと同様。

XYパッドの廃止

賛否両論ではあるが、Zebra3では採用しないようだ。 その代わりCtrlが A~Dへと拡張された。

各モジュールの設定が保存できるようになった

保存、コピー&ペーストなど、モジュール単位での操作が向上した。

zebra3 beta1

全体的に

モジュール数は、およそ26個。 Zebra2で重複していたモジュールは整理されたが、物理音源系は逆に分割されたりして、総数はそれほど変わっていない。 モジュールひとつひとつは、なるべくシンプルな方向にまとめられている印象。 特にエフェクト系は迷わず操作できるように一般的な名称のパラメータが並ぶ。 Zebra2は特殊で挙動が掴みにくいパラメータが多かったので、その反省だろうか。 しかしシンプルだからと言って機能が低いわけではない。 自由度の高いルーティングによって、今までは不可能だったことも出来そうだ。 これから時間をかけて、探ってみることにする。

CPU負荷は高いが許容範囲

Zebralette3のベータをいじっていた時は、Zebra3は重すぎて動かないのではないかと思ったが、 意外と問題なく動いた。 直前のリリースでの負荷軽減が絶大だったようだ。 さらに今後UI関係の最適化が行われるようだ。

分かりやすさの優先順位は低め

u-he製品全般に言えることだが、Zebra3も視覚的なフォローは少な目となっている。 さらに専門的な用語が連発するので、予備知識も必要となってしまう。 ということで初心者にはかなり厳しい仕様となっているが、マニアには楽しい仕様と言える。

人が操作するためのシンセ

音楽業界もAI化が進んでいるが、u-heは少し距離を置いている。 AIに頼ると、人がますます考えなくなるので、考える必要があるプラグインというのは人にとって必要かつ重要。 Zebra3は、CPUだけでなく人にも高負荷を与えるシンセであることは間違いない。

次ベータ版予告

現状の目立つバグを解決した次ベータ版を2026年1月にリリースするようだ。

Zebra3