u-he ZEBRA legacy COMB
Zebraにおいて、一番難解なオシレータであるCOMB(くし形フィルタ)。zebra2では2個、zebraHZでは4個まで使える。 u-heのフリープラグインであるTriple Cheeseというものがあるが、あれに近い。ただし構成が違うので同じような音作りをしたいときは苦労する。
Zebra2 COMBモジュールの特徴
原理的には物理音源のKarplus-Strongアルゴリズムに近いものと考えてよいと思う。 COMBモジュールを使うことで、アコースティック楽器のようなリアルな要素を追加できる。例えば打楽器のアタック、弦の擦る音、管楽器のブレス音など。いずれもノイズに近いところがある。これを他の音と組み合わせることで、説得力のある音が作り出せる。 下はチェロぽくしてみた音。ゴリっとした音は他のオシレータでは難しい。
Zebra2ならではの特徴としては、COMBモジュール自らがインパルス信号(ひじょうに短い波形)を発振できること。もちろん外部からの音もCOMBモジュールを通すことができるので、この2つをうまく組み合わせることで、いろんなケースに対応できるようになっている。アタックは内部インパルス信号、持続的なノイズ成分は外部オシレータを使うなど。
PreFillノブ 内部発振器のレベル調整。
inputノブ 外部入力レベル調整。マイナス側は位相が反転する。中央が入力レベル0となっている。
コムフィルタの基本的な構造
ノイズなど音程感のない音源に対してショートディレイをかけると、特定の周波数が打つ消しあって、ある音程感を生み出してしまう。 スペクトルがくし形になるため、くし形フィルタ=コムフィルタと呼ばれている。 下はホワイトノイズに5msecのショートディレイをかけて、原音とミックスしたもの。周波数軸をリニアにすると等間隔であることがわかる。
本来エフェクト的な位置づけだが、ZebraのCOMBモジュールは発振器としても利用できるようになっている。
ZebraのCOMBモジュールのブロック図がないので、挙動が掴みにくいのだが、一般的なフィードバック付コムフィルタの回路は以下のようになっている。
こんなディレイ回路がおそらく4つあって、それぞれの接続方法や設定を変えられるようになっている。
PREFILL TYPE
COMBモジュール自ら発振できるインパルス信号は、PREFILL TYPEからNoise、Saw、Squareが選べる。
Noise
短い信号となっている。理想的なインパルスであれば、すべての周波数を含んでいる。しかしCOMBのNoiseは、そういうものではなく、鍵盤を押すごとに含まれる周波数成分が変化すると考えていい。デメリットのように感じるが、このランダムさが生ぽさを出すのに役に立つ。
Saw
1波形分だけが出力される。ノコギリ波は整数倍音で構成される。
Square
1波形分だけが出力される。矩形波は奇数倍音で構成される。
まず外部入力はせず、COMBモジュールだけを使ってみる。Env、エフェクト類も無効。
PREFILL TYPE Noise
その他設定は以下のようにした。 これで自己発振可能になっている。PreFillノブが内部発振器の音量となっている。ここでは最大にしている。 またFeedbも最大にしているので、短いインパルス信号は持続音のように聴こえる。
OUTPUT部は下のようになっている。
この状態で音を鳴らすとこんな感じ。
PREFILL TYPE Saw
noiseの時よりも、倍音が少ないことが影響し音が丸くなる
PREFILL TYPE Square
sawに近いが、さらに倍音が少ないためアタックがより丸く聴こえる。
これらの使い分けは簡単で、高周波成分まで豊かに含みたい場合はNoiseを選び、うるさいと思えた場合は、SawやSquareを選べばいい。
MODE
ZebraのCOMBは4つのディレイラインがあって、それらの組み合わせ方法がMODEで、7種類ある。 MODEによって、無効になるパラメータがあったり、機能が変化するので、とにかく分かりにくい。 マニュアルを見てもブロック図による説明がないので、原理的な理解もできないという状態。
Comb
演奏された音に合わせてチューニングされたシンプルなステレオディレイ。
Tone 無効
Flavour 無効
サンプルは内部発振だけ。これを基準とし、他MODEとの違いを確認。
Split Comb
入力はモノラルにまとめられディレイ1に送られる。ディレイ2とはクロスフェードされているとあるが、意味がよくわからん。 出力 がスプリットされている場合、左チャンネルがディレイ1、右チャンネルがディレイ2となる。
Tone 遅延時間の比率
Flavour ディレイ2に供給される入力信号の量をコントロール。
設定は上とほとんど変えていないが、管楽器ぽくなった。
Split Dual
入力信号がモノラルに加算されない点を除き、Split Comb と同じ
Tone 遅延時間の比率
Flavour ディレイ2に供給される入力信号の量をコントロール。
設定はあまり変えていないけど、サスティーンがなくなり、ピッチカート風になる。設定を変えればサスティーンを伸ばすことは可能。
DIff Comb
基本的にSplit Dualと同じだが、ディレイ2はオールパスフィルタになる。 このモードは、特に奇妙で複雑なサウンドに適している。
Tone 遅延時間の比率
Flavour オールパスフィルタのフィードバック
サンプルはちょっと弦ぽくしてみた。
Dissonant
4x4のフィードバック・ディレイ・ネットワークで、常にメタリックなサウンドになります。
Tone ディレイレシオ(音程)に影響
Flavour ディレイレシオ(音程)に影響
Distort 無効
打楽器ぽくなる。また使い方によってはかなりの不協和音になる。
Cluster
互換性を考慮して搭載された実験モード。自己発振は利用できないようだ。 Inputレベルも調整不可能な特殊なモード。 そのうちなくなるかもしれないので、使わない方が無難。
Blown
名前の通り気鳴楽器全般に最適化されている。 高域を強調するためにフィードバックパスにバンドパスフィルターを使用。 パラメータの関係でピッチが変化しやすいので慎重なチューニングが必要。
Feedb ピッチが変化するので注意が必要。
Tone 無効
Flavour -100だと無音。他はピッチが変化する。うまく調整すると管楽器ぽさなどを演出できるかも。
サンプルは外部入力も使って笛っぽくしてみたが調整不足。
まとめ
内部のnoiseインパルスを使う場合、周波数特性が打鍵のたびに変化することで不安定になりやすい。 各ノブも微妙な差で大きくサウンドが変化するので、全体像が掴めない状態で音作りは非常に困難。 ただ、うまく使うと生っぽさを出すのに重宝する。 全体的に危なっかしい音になるのは共通。これが生っぽさのポイントかもしれない。 打楽器では大活躍しそうだ。
タムを模した音。それっぽい響きをしてくれる。FMも兼用。
スネアドラムを模した音。ノイズも兼用。