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あちゃぴーの自転車通勤
CLAPi u-he Zebralette 3 
波形研究 Casio Phase Distortion

Phase Distortion(以下PD)は80年代にCacioが自社シンセサイザーに採用したデジタル音源方式。 1984年にCZ-101が登場している。ちなみにYAMAHA DX7は1年前の1983年発売。

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FM音源に近い部分もあるが、基本的に別方式と考えてよいと思う。 FM音源はオペレータが6個あり様々な音を作り出せたが、その分扱いが難しかった。 PDは、音作りの幅はFMほどではないが、よりアナログライクな音で、扱いもアナログシンセを意識していてユーザーにやさしかった。

u-heではBazilleやZebraでもPDという名前を使った機能がある。 特にBazilleでは下図のようにOSCにPDが堂々と組み込まれ、その下のFractalizeもPDの影響を受けたものとなっている。 またZebralette 3のOSC Editorにも-cosが堂々とあるので、お気に入りなのがわかる。

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Zebralette 3のFXにあるPD。 パラメータはDepthだけと簡素なもの。

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Casio CZ-101のWave Form

FMがサイン波だけで作り出すデジタル音源に対して、PDはコサイン波だけで作り出すデジタル音源。 CZ-101ディスプレイ下にコサイン波から作られたWave Formの絵が8個並んでいる。 これを2個別々に使えるので、組み合わせたり、加工したりして音を作る。 ユーザーがコサイン波から作るというわけではなく、CZ-101が使いやすい波形まで加工した上で、ユーザーに渡すという流れになっている。そのためFMのように敷居が高くなかった。 今回は、このWave Formを、どうやってコサイン波から作っているのか追ってみる。

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使い方としては、FXにPhase Distortionを用意。

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上記設定は、白い線が描いたカーブで、青い線が出力波形で-cosになっている。 カーブはSawUp(ramp)なのに、なぜ-cosが出力されるのか?

PDでは実は-cosが見えないところに用意されている。 そしてCurve Morphが指しているカーブが-cos読み取りテーブルとなっている。 下図のようにSawUpのY軸がアドレスとなっていて、見えない-cosのアドレスを読んでくるという仕掛け。 X軸は1周期分となっている。

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次の例は、SawUpを2回繰り返すと、1周期で-cosを2回読み込むことになる。結果的にオクターブ上の音になる。 読み取りカーブは自由に書けるので、様々な波形を生み出せるのが理解できると思う。

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こんな感じでなので、PDのことが分かっていないと、どうして波形が生成されているか理解できないと思う・・・

zebralette 3でPDを扱う場合の注意点としては、現状ではDCカットがないので、プラスかマイナスに偏った波形が出やすいこと。 安全対策としては、DCカットのエフェクトを後に入れた方がいいかも。

1 standard sawtooth

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シンセに必須のノコギリ波。これをPDで実現する場合は、最もベーシックな方法としては、最速で-cosの中央のアドレスまで読み、その後ゆっくり最後のアドレスまで読むという感じだろうか。

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オシロで見ると以下のようになる。読み取りカーブが直線なので、コサインのカーブが出ているが、調整すれば、それなりのノコギリになる。

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BazilleのPDもコサインぽさが出ているので、PDのノコギリ波はこんな感じでよさそう。

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2 square

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これも基本波形の矩形波。CZ-101がどうやって読んでいるか不明だが、いくつかの方法で実現できる。 とりあえず、なるべく基本に忠実にやってみるとこんな感じ。

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オシロで見ても同じで、これぞデジタルというぐらい真面目な矩形波。 エッジにヒゲがあるのは、ナイキスト対策。

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Bazilleの矩形波はアナログぽいね。

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3 pulse

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絵的には多分-cosが一瞬立ち上がるという感じの波形でよいと思う。 理想的なデルタ関数ではない。

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オシロ。まぁ瞬間的なパルスにしてみた。

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Bazilleは常識の範囲のパルスという感じ。

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4 double sine

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パネルの絵を再現すると下のようになる。

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オシロはこんな感じ。まぁそのままです。

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Bazilleはdouble sineを採用せず2Pulseというものにしている。 たぶんエッジを効かせたいと思ったのだろう。

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5 half-sine

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これは分かりやすい波形。

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Bazilleも似たようなもの。向きが違うけど。

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6 resonant sawtooth

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この波形はアナログシンセのノコギリ波にフィルターをかけて、レゾナンスを上げて行った時の波形を再現しようとしているように見える。 実際のアナログではもっと混沌としているが、これはこれで図形的にもよいのではないかと思う。 下はバーチャルアナログではあるが、Filterscape VAでノコギリとフィルターレゾンナンスを調整して作った波形。

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Zebralette 3で再現する場合、いろいろな方法があるが、プロセスを忠実になぞってみると以下のようなプロセスかな。 FX1をPDにして読み取りカーブを指定、FX2をWindowにしてノコギリ波を選択。 ウェーブテーブルのひとつは読み取り用で6回のSawUp、2個目はWindow用のノコギリ波。

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オシロを見ると下のようになる。音的にはVAと比較すると整然としている。 アナログ支持派からしたら、デジタルくさくて物足りないと言われそう。 そういうアナログらしさは、何とでもなるので、むしろ理論通りに動作するZebralette 3は素晴らしいと評価したい。

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Bazilleは、Fractalize Sawを使って同じような波形が作れる。

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7 resonant triangle

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1個めのカーブを使って4回コサインをトレースした後は、Windowを使って、2個目の三角カーブの中に埋め込んでいる。

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Bazilleは、Fractalize Triを使って同じような波形にしているが、よりアナログぽくなっている。

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8 resonant trapezoidal

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台形という感じはしないけど、木管ぽい音がするパターン。 やり方は上記と同じで、Windowの形が違うぐらい。 とりあえず中に詰め込む波形の数を合わせてみた。

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Bazilleは、Fractalize Maxで同じような波形になる。

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PDの基本はこんなところだろうか。 カーブの自由度が高く、モーフィングも出来るZebralette 3なので、これだけでもかなり面白いことが実現できる。 応用記事は追々書いていこうと思う。 また、そのうち音も追加するかも。

それにしてもBazille面白いなぁ。OSCはデジタルPD&FMで、他はモジュラーアナログシンセという組み合わせ。Zebraとは違う、よりマニアックに攻めた感じ。ハード実機が存在するDivaやReproよりもBazilleの方が興味深い。

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