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あちゃぴーの自転車通勤
東海林修 機材の変貌3
1985~1986 Fairlight CMI IIx

Fairlight CMI IIx時代の後半 前のリリースから5か月空いたが、同じ月に、いきなり3枚リリース。 この空白はコロンビア側の都合のような気がする。制作は空白期間も途切れなくやっているので。 1985年は合計7枚リリースしている。

1985年5月 「ミルクハウス」

ミルクハウス

この作品は少女漫画だがアニメ化されておらず、オリジナルはコミックイメージアルバム。80年代はイメージアルバムが流行っていた。そのイメージアルバムのデジタルトリップ版ということなので、随分ニッチな臭いがする。 オリジナルはフュージョン、イージーリスニング系のさわやかで健康的なバンドサウンドで、耳当たりもよく、完成度も高い。歌ものは10曲中5曲もある。 作曲者は複数人いるが、メインの二人は「ファミリー!」ともかぶっていて、音楽的にも同じ傾向。

オリジナルは1枚だけなので、デジタルトリップ版もその中からの選曲となってる。「ラプソディー」「デジタル・ボーイ」が省かれた8曲構成。 リリースは下記の2枚と同じ5月だが、ライナーノーツを見る限り、このアルバム制作時点ではFairlightはMIDI対応しておらず、KURZWEIL 250もMIDIコントロールではなく、音をFairlightに取り込んで利用している。このアルバムではKURZWEIL 250の音を積極的に使用している。 この手の歌ものは、インストアレンジしにくいだろうと思ったら、やはり間が抜けやすいと言っていた。テンポを速めたりするなど、インストとして成立するように苦労したようだ。 「インビテーション・トゥ・ポール」

1985年5月 「風と木の詩」

風と木の詩

1984年版の「風と木の詩」のデジタルトリップ版。曲目も同じ。イメージやコンセプトを大きく変えずに微妙な変化を楽しむアルバムになっている。1年経つと機材も変わるし、気分も変わるので、それが反映されたアルバムと言える。 ただ、買う側としては、いろんな意味で困るアルバムだ。 「いざまさに夢の波間に」オリジナルに対してリズムを細かくしたとある。アルバム全体を通して打楽器が目立つようになった。音色なども含め聴きやすくなったように感じるが、オリジナルの静けさは若干薄らいでしまった。

「いざまさに夢の波間に」1984年オリジナル版

1985年5月「超人ロック ロンウォールの嵐」

超人ロック ロンウォールの嵐

東海林修作曲のオリジナルイメージアルバム。 フェアライトもMIDIが扱えるようになり、転機に立ったと語っている。ただ初期のMIDIは互換性の問題があり、やはり苦労したようだ。このアルバムは今までのデジタルトリップや、銀河鉄道でやった重厚なオーケストラサウンド、キマイラでのアコースティックなど、いろいろな要素を詰め込んできたように思える。 アコースティック系特にストリングスはKurtzweil-250によるところが大きい。 それを比較的ポップで聴きやすくコンパクトにまとめてきている。 10曲中3曲は歌モノで東海林修は関わってなさそう。お気に入りの一枚。

「ロンウォール ラプソディ」エレクトロポップとアコースティックを組み合わせたという曲。明るいリズムが入るかと思えば、陰のあるメロディを組み合わせてくる。サンプルした音を多用しているが、サンプリング時間は最大でも2秒程度らしい。何かゼンマイを巻くような音が入っているが、発想がさすがだと思う。組み合わせが多次元。

1985年6月「バイファム2」

バイファム2

2作目。やはり1枚目が売れたのだろう。 「悲しみの色」では女性の声のサンプリング(?)を使ってマイナー平行移動の不気味なサウンドをより不気味にしている。ピアノはKURZWEIL。曲によってはEmulatorも使ったとあるので、導入はこのアルバムからかな?

1985年10月「タッチ」

タッチ

デジタルトリップが続く。東海林修が音楽監督をしていたステージ101に歌い手として出ていた芹澤廣明が作曲したということで、その成長に喜んでいる。 機材ではFairlight CMI、Linn Drum、KURZWEIL 250に加え、新たに下記を導入。 Emulator II(2,980,000円)

E-muEmulatorII

Overheim-Xpander(648,000円)

Overheim-Xpander

アナログサウンドも今後幅を持たせるために使っていこうという思いが出始めたようだ。 逆にLinnはそろそろという感じらしい。 このアルバムで気になったのは、一貫してある歪み感。 状態の悪い音源で聴いてたときは、レコードからの録音が悪いのだと思っていたのだが、状態の良い盤を入手したところ、元々の歪み感が尋常ではなかった。 これはシンセの音色作りの部分(特に高周波)と、ミックスの両面があって、意図的ではないとは思うが、かなり危ない音作りをしていたようだ。 「好きになるなら」

1985年11月 「キマイラ吼II」

キマイラ吼II

オリジナルイメージアルバム第2段。1枚目が好評だったのだろう。しかし2枚目はコンセプトを変えてきた。かなりマニアック路線で、キャッチーさは皆無。歌モノなし。東海林修作品でここまで振り切った作品は稀だと思う。まぁすべてはジャケットが物語っている。天野喜孝もよくも中身を絵で的確に表現できるもんだ。感心する。生楽器は意外と少な目で、サックスとギターだけが2曲で参加しているのみで、あとはシンセサイザーによるものだが、デジタルトリップのような世界ではないので注意。このアルバムからだろうか、ホラー寄りのサウンドに興味を持ち始めたようだ。

サックスは土岐英史。ギターは裴明煥(はいめいかん)。

「凶夢」ほとんどホラー映画の劇伴にしか聴こえない。 ダイヤル式黒電話のベルや、ダイヤルを回す音が入っているので、今の人には何の音かピンと来ないかもしれない。またキマイラには尺八の音を入れたくなるようだ。一気に和の感じが出てくる。

Fairlight C.M.I
Kurtzweil 250
Emulator II Disk
Overheim Xpander
PPG Wave Term II(350万)

1985年12月 「ファミリー!」

ファミリー!

1985年最後のアルバムはデジタルトリップ「ファミリー!」前作「キマイラ吼II」とは打って変わって健康的でさわやかなフュージョンサウンド。 原曲はキャッチーで聴きやすく、曲としての完成度も高いと思う。 その後レコードを入手したが、先生も「全曲とても良く出来た作品ばかり」と褒めていた。 このアルバムは10曲中8曲が元歌ものという構成で、オリジナルイメージアルバム2枚からのセレクトとなっている。 全体的にハープを取り入れた曲が多い。 サンプルは「アンダーソンズ」。オーバーハイム エキスパンダーによるイントロ。

1986年1月 「ウィリアムテル序曲」

ウィリアムテル序曲

この年は5枚をリリース。サウンド面含めて大きく変化した年でもあると思う。 クラシック曲をシンセでリアレンジという内容だが、「おもちゃのシンフォニー」と、「ペール・ギュント」という別々のアルバムだったものをCDリリースで1枚にまとめたようだ。そのため前半と後半では扱う曲調が違うため印象が大きく異なっている。

ウィリアムテル序曲

もっとも気に入っているという「ソルベーグの歌」Emulator II、Oberheim-Xpander、Kurtzweil250を使い分けたという。

1986年4月「Luna Sea」

Luna Sea

完全オリジナルアルバム。1980年の「SHAMBALA」以来ではないだろうか。 それだけ気合が入っているようで、中身はぶっ飛んでいた。 特定方向に振り切った作品はいくつかあるが、これは振り切りすぎて飛び出てしまったようだ。新しいジャンルを生み出しているとさえ思える。

ライナーノーツでは、ロマンチックなことを言っているが、個人的な感想としては狂気しか感じない。しかも異世界。衝撃のアルバムで、35年経っても凄みは全く変わらない。ジャケットは天野喜孝が担当。やっぱり中身聴いてから描いているよね? ちゃんと狂気が絵に表現されている。

サウンド的には、この時代の流行りを取り入れているとも言える。たとえばFairlightによるジャンというオーケストラルヒットや、ドラムのゲートリバーブサウンドなど。しかし、それは些細なことで、本質は別のところにある。リズムの異常性や構造的な独創性だろうか。謎すぎて未だによくわからないので、今更ながら全曲コピーして解析してみようかとさえ思っている。 「Human body」と「Far Side」の一部。

Fairlight C.M.I
Kurtzweil 250
Emulator II

1986年5月「アリオン」

アリオン

これがおそらく最後のデジタルトリップ。アリオンは久石譲作曲。割と似たような機材を使う二人だし、かぶるところも多いので、オリジナルと比較しながら聴くと楽しい。さすがの久石譲に、さすがの東海林修のアレンジで、かなりおいしい作品。

「戦闘」まずは久石譲のオリジナルバージョン。多分Fairlight CMI IIxを使っている。この時期はオーケストラルヒット使いまくり。

次いで東海林修バージョンの「戦闘」同じFairlight CMI IIx で、どうリアレンジするかが聴きどころ。同じくオーケストラルヒットを使うが、打楽器の扱いが面白い。まるでテクノという音色で手数も多い。戦闘というイメージに合うか?というと微妙な気もするが、そういう次元で考えてはいけない。不思議と癖になると思う。そこが重要。 さらにオリジナルモチーフも取り入れ展開しながら盛り上げて行くところがさすがである。爆発の効果音も入れて激しい戦闘を演出。アルバム全体を通してアナログシンセらしき音が効果的に使われている。

Roland αJuno-1(99,800円)

Roland αJuno-1

Overheim-Xpander
Emulator-II
Kurtzweil-250
Fairlight-II X

1986年9月「ルーツ・サーチ食心物体 X」

ルーツ・サーチ食心物体 X

オリジナルアニメ作品のオリジナルサウンドトラック。 映像作品は個人的に観てらんないし、音楽も全然うまく使っていない。 東海林修劇伴に加えて、歌モノはミッキー吉野が作曲という豪華な顔ぶれ。 大物音楽家2人を使っても、これでは残念過ぎる。 スタジオぬえの加藤直之によるジャケットも力入っているのだが、中身とは何の関係もない。 「Splashing Light」宇宙的スケールとホラーを組み合わせたような劇伴となっている。

Fairlight C.M.I
Kurtzweil 250
Emulator II

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